友人が「一年前がついこのあいだのように感じる」と言っていて,僕は一年前というのは遠い昔のように感じていたから,意見が合わなかった.その時僕の念頭にあったのはベルクソンで,つまり,記憶の中の距離は,実際の時間上の距離とは違う,ということだったけど,うまく説明できなかった.いや,それだけじゃない.僕が一年前を遠い昔のように感じるのは,例の「大切なことはみんなすでに終わっている」というエロゲー的な考え,それからひとは一瞬ごとに死んでいるという刹那滅的,あるいはヒューム的な考えが念頭にあったからだ.その両方をあわせて,原始偶然の思想と呼んでもいい.とにかく,その友人にとっては,一年前はつい最近の出来事だった.一方で僕にとっては一光年の彼方の遠い遠いお話で,つまり僕と彼では住んでいる宇宙が違っていた.そんな感じ.