再開した.

 記憶が正しければ,確か二回生の終り頃から三回生の終り頃までブログを書いていた.その頃の僕はまともな文章というものを全く書いた経験がなく,内容があるものが書きたいというよりは,とにかく,何らかの語りの手法を身に着けたいという欲望に突き動かされて書いていた.それで一度は素人としてはそこそこの文体が身に着いたような気がしていたのだけれど,それももう忘れてしまった.とはいえ今から考えるとあの頃の僕の文章はペダンティックで過剰装飾気味だった気もする.今度はもう少し誠実に,かっこ悪く,日々感じたことや遭遇した出来事について書いていこうと思う.
 それで今日何をしていたかというと,ほとんど何もしていなかった.というのは卒業論文の発表会が終わってからというものすっかり力が抜けてしまったからで,昨日は一歩も外に出れなかったし,今日の午前中は布団から出ることができなかった.そんなわけで,布団の熱気に包まれてぼんやりとした意識を持て余しながら,時間だけが過ぎていった.午後になって,そういえば,パイロットが焼かれる動画がハリウッド映画みたいだと誰かが言ってたなと検索して視聴した.予想以上に映画やゲームの一シーンみたいで,人が燃えているというのに何も感じなかった.ふと処刑は昔大衆娯楽だったことを思いだし,娯楽としてはアサシンクリードのプレイ動画の方が優れていると思った.
 それからやっと外に出る気になって,鞄に何冊か本を入れて靴を履き,扉を開けて,鍵をしめた.雨あがりの薄雲と霧に覆われた景色が意外と幻想的だった.短歌が詠めそうな気がしたけど,何も思い浮かばなかった.一歩一歩足を進めるたびに気分が晴れ上がってきて,そのまま本屋まで行こうと思った.けれども取り立てて欲しい本も無かったので,道を変えて大学構内に入った.広場のベンチに腰かけて一時間くらい本を読んでいると,制服を着た高校生が列をなして目の前を通り過ぎて行った.今日は大学入試の日なのだろうか.一瞬そう思った後,日付を思いだしてまだまだ先のことだと思い直す.では彼らは何者なのか.修学旅行? それともオープンキャンパス? しばらく耳を澄ましていると「模試」という言葉が聞こえてきた.それで僕は納得して,ふたたび書物のページに眼を落した.高校生がすっかり姿を消した後,図書館に寄って,現代詩文庫をいくつか斜め読みしてから外に出た.五時半なのにまだ空が青く輝いていて,青空を見ながら帰るのは嫌だと思った.けれどもけっきょく帰路に着いて,少しごろごろして,今はこんな文章を書いている.そういうわけ.