だいがく!

 大学のとある授業のTAをやってるのだけど,授業が終わって学生が去って行った後の空っぽの講義室で先生が,誰も言うことをちゃんと聞いていない,とほとんど目を吊り上げながら言った.僕個人としてはそんなことできれられても,とまず思ったし,講義を聞きたくない学生は聞いてなくてもいいじゃないとも思うわけだけど,友人に訊いてみると,自分の講義(そういうものがあるとして)を全然聞いてくれないならやっぱり気分を害すると彼は言って,みんな理系で理論屋でしかも大学にいるのにリベラルじゃないんだなーと感じて僕は重い気分になった.
 僕の意見は簡単で,学部の三年間というのは不自由の多い人生のなかで一番自由な時期なのだから,できるだけ好きに生きればいい.授業というものは,そうはいってもどうやって生きればいいかわからない人のために与えられる暇つぶしで,生き方の分かってる人はしかたなく受けるものだ.だから気に入った授業はまじめに受ければいいけど,すべての授業に真剣になる必要はない.
 とこんなことを言うと,大学を何だと思ってるんだと言いたくなるひともたくさんいるだろうけど,あまりにふまじめなら単位を落とすわけで,もともと大学は趣味と専門のバランスが取れるようにできている.それにまともな研究はどっちみち,ドクターまで進むような一握りのまじめすぎる学生にしかできないものだ.繰り返すと,学部の三年間は人生で一番自由な時期で,それゆえ自分のやりたいことがとことんできるほとんど最後のチャンスなのだから,好きに生きればいいのだ.最低限の専門知識は身に着けつつ,そこからの逃走を図ること,好きに生き,自分なりの生成変化をすること.
 とここまでが理想論なのだけど,現実を見てみると,大学生の貧困とか,やりたいことが何もない大学生とか,色々なものが目に入る.大学を職業訓練校にしようというのは論外としても,自由の危機はいたるところにあるわけで,好きな時に本を読んで,世界観のめまぐるしい変化を経験しながら過ごせた僕の学部時代は幸せだったと思う.